星野耳鼻咽喉科内科 睡眠呼吸センター

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睡眠時無呼吸症候群 治療するにあたって

肥満治療 (CPAP離脱) 肥満をとる


どの程度やせればCPAPを止めることができるのでしょう?

 
3つの目標値設定の方法があります。

  体重が10%増加するとAHIは32%増加し、10%やせるとAHIは26%減少するという報告があります(JAMA 20 3015-3021,2000)
 
1)AHIが20以下になる体重を目標体重にしてください。
AHIが20以下になるとCPAP治療が保険適用になりません。
 
2)マウスピース移行へのB.M.I値の目標値がありますのでそのB.M.I値を目標体重にしてください。
 
3)簡単には「10%の解決法」を治療プログラムの目標と考えるのもひとつの方法です。

標準体重までの減量となると、かなり肥満してからでは大変です 。
睡眠時無呼吸症候群の有無にかかわらず、一般的に体重の10%,またはおそらくたとえ5%というわずかな体重減少であっても、肥満における大半の合併症をコントロールしたり、少なくとも改善するのには十分です。
 
 

食事療法 〜あなたを太らせる食生活パターンはどこに?〜

 
 同じ肥満でも、肥満に至った生活パターンは人によって違います。
あなたの食生活で、あてはまるものはありますか?
 
太文字は肥満が原因の睡眠時無呼吸症候群のサラリ−マンに見られるものです。
  1. 大食漢
  2. 毎日のようにオヤツ
  3. 夕食時間が20時以後、→規則正しい生活が出来ない
  4. 夜食の習慣、→規則正しい生活が出来ない
  5. 朝食抜きで一日2食
  6. 油濃い食事が好き
  7. 砂糖・甘味が好み
  8. 野菜類をほとんど取らない
  9. 一食15分以内の早食い
  10. 他人が食べたらつられ食い
  11. イライラ気分でストレス食い
  12. テレビを見ながらながら食い
  13. ほとんど外食やコンビニ弁当→規則正しい生活が出来ない
  14. 日本酒にして1日1合以上の飲酒
  15. 炭酸・ジュース・コーラ・缶コーヒー・牛乳の飲みすぎ
食事療法 イラスト

まさに自分の食生活を言い当てられている・・・と思われるかたは、その食生活パターンを改めないことには肥満症からは逃れられません。
 
ひとつひとつでも、改善を目指しましょう。
もし、悪い食生活はしていないのにやせない・・・というかたでは、数日間の食事内容や朝晩の体重の変動をグラフ化して記録したもの(グラフ化体重日記)から、食生活の問題点を一緒に探しだすようにします。
 
1kgの体脂肪は約7000キロカロリーを貯め込んでいます。
もしあなたの最近の体重が一定ならば、
毎日200〜300(250×30日)キロカロリー減らすことで一ヶ月で1kg減量出来る計算
です。
 
一般的には男性で一日1600キロカロリー(一食500〜¬600キロカロリー)、女性で一日1200キロカロリー(一食400キロカロリー)程度の食事にすると、やせ始めます。
 
肥満の度合いが強かったり、早くやせる必要のあるときには、超低カロリー食(VLCD:Very Low Calorie Diet、オプティファースト・オベキュア・マイクロダイエットなど)を医師の管理下で行うこともあります。
これは通常の食事ではなく、フレーバーを加えた粉末を溶いて液状として飲むものです。
この際は一日500キロカロリー程度になり、一日200〜250gの減量が可能になると言われます。
 

運動療法 〜軽めの運動を、やや長く〜

1.なぜ運動が肥満によいのか

 
1.骨や筋肉の量(LBM:Lean Body Mass:除脂肪体重)を減らさずに、体脂肪を燃焼させられる。 特に、食事療法だけでは減りにくい内臓脂肪を減らす効果が大きい
2.運動すると、筋肉への血流量が大幅に増加(下表)する。
 
  ・・・ 運動中の血流分布 ・・・
 
心臓
肝臓・消化器
腎臓
骨格筋・皮膚
骨・脂肪組織
安静時
13〜15%
4〜5%
20〜25%
20%
18〜26%
10〜15%
運動時
8〜14%
4〜5%
3〜5%
2〜4%
80〜85%
1〜2%
 この結果、インスリンが筋肉に作用しやすくなり(インスリン感受性の亢進)、ブドウ糖が血管内から筋肉へスムーズに移動できるようになって血糖値が低下し、エネルギー代謝が健全になり、糖尿病を予防・治療できる
3. 高血圧を改善し、血液中の善玉コレステロール(HDLコレステロール)を増やし、中性脂肪を減らす
4. 心臓や肺の機能が良くなり、体力(筋力・筋持久力・柔軟性)が増加する。
5. 血栓を溶かす力(線溶活性)が亢進し、血栓症の予防に役立つ。
6. 慣れてくると爽快感がえられ、ストレスが解消される 脳・神経・精神の機能が活性化される。
7. 規則正しい生活習慣が身につく。
 
 

2.運動には種類がある

 
有酸素運動(エアロビクス)--- 全身持久力の養成 、ウォーキング、自転車
   一日30分〜60分の「おしゃべりしながら出来る程度のウォーキング」がおすすめです。
 
無酸素運動(アネロビクス)----筋力の養成、 ランニング、縄とび

   適度に無酸素運動を加えると更に効果的です。
 
 やせるためには「全力でダッシュ」「ダンベルを持ち上げる」といった短時間しか続けられない強い筋肉運動(無酸素運動)は必ずしも必要ではありません。
15分以上継続できる軽めの運動(有酸素運動)を30分以上日課とすれば、食事療法をおこなっていても筋肉が落ちることはなく、内臓脂肪をうまく減らすことができます。

具体的には一日30分〜60分の「おしゃべりしながら出来る程度のウォーキング」がおすすめです。
「家ではバタバタしている」「会社のなかではよく動いている」と言われることも多いですが、家事労働では、有効な運動療法にはなっていないことがほとんどです。試しに万歩計を買って一日つけてみましょう。
3000歩/日では、運動不足です。7000歩/日でまあまあ、10.000歩/日以上なら合格です。
無酸素運動は筋肉の量を増やし、代謝状態の良い身体に変化させますので、適度にこれを加えると更に効果的です。
 
 

3.運動療法と食事療法の関係

 
運動療法 運動療法中は、食事療法との併用が大事ですが、糖質(炭水化物)は一定量摂取すべきです。
すなわち主食を抜いてはいけません。
主食を抜くと、体の蛋白質が消費され筋肉が減ってしまいます。
減量するときには、神経系1〜2%、骨10〜15%、筋肉・腺・血液30〜35%、脂肪70〜90% が減少するとの報告があり、減量は体脂肪だけを減少させるものではありません。また、減食と運動は同時にはじめるより、減食を先に始め、慣れてから運動を開始したほうが、体蛋白の減少が防げるようです。
 

4.どの程度の強さで運動するのか?

 そのひと個人に適当な運動強度を算出するのに「ボルグの式」という計算法があります。
年齢と安静にしているときの脈拍数(心拍数)から以下のように計算します。
{(220-年令) −安静時心拍数}×運動強度(k)+安静時心拍数
このときの運動強度(k)は「軽く息がはずみながらも運動中に会話ができるくらいのつよさ」であるk=0.5が適当です。60歳男性、安静時脈拍72回/分ならば
{(220−60)−72}×0.5+72 = 116回/分
脈拍(心拍数)になる程度の運動が適当、ということになります。

 
  

5.どんな運動を、どれくらい

 
 1単位は80キロカロリー消費相当の運動量です。これを一日2単位、週4回以上できれば十分です。
年齢・体力・好みに応じて運動の種類を選んでください。
 
 ◆ 80キロカロリーを消費する運動の種類と時間
運動の強さ
1単位あたりの時間
運動の種類
非常に軽い
30分
ゆっくり散歩、電車で立つ、買物、軽い体操
軽い
20分
ふつうに歩行、ラジオ体操、ゴルフ(カートなし)
自転車(平地)、水中歩行、階段(おりる)
運動器具(エアロバイク、ステッパー)、社交ダンス
中等度
10分
軽いジョギング、テニス練習、階段(のぼる)
自転車(早め・坂道)、ジャズダンス
バドミントン練習
強い
5分
縄跳び、水泳(平泳ぎ)、マラソン、剣道、ラグビー
 
運動の開始当初は、あまり張り切らず軽めの運動から始めるようにしましょう。
 運動の開始前にはウォーミングアップとして5〜10分のストレッチを中心とした準備体操を行えば、肉離れや捻挫を防止できます。また、運動終了時も整理体操(クーリングダウン)を5〜10分行うことで、運動の急な中断による不整脈などを防止できます。
 
足が弱って運動はできないという人は、NHKのテレビ体操で座ってやる方法をみてやりましょう。
座位で有酸素運動ができる運動ビデオも市販されています。
「すわろビクス」  http://www.bookhousehd.com/vi4002.html  
 

6.どうしても運動療法にさく時間がない人への工夫

 

7.運動療法をすすめられない人

1.通勤の時、バス・電車をひと駅前で降りて歩く。
2.エレベーターは極力使わず、階段にする。
3.少し遠いマ−ケット(ビデオショップ・本屋さん・喫茶店など)まで歩いて買い物にいく。
4.祝祭日には毎回広いショッピングセンターや百貨店を全部見て回る。
5.家庭菜園を耕す。
6.やや運動量の多い犬と散歩。
7.いつも万歩計をつける(5000歩 → 7000歩 → 10000歩/日 と徐々に増やす)。
8.自宅に運動用器械を買う(ウォーカー・ステッパー・エアロバイク)
 
1.高度の肥満者で、運動を始めると骨・関節を痛める可能性がある場合。
2.糖尿病で、血糖コントロール状態が極めて悪かったり、慢性合併症がかなり進んで
いる場合。
 →空腹時血糖が 250mg/dl 以上 、ケトーシスがある
 →糖尿病性腎症で腎不全になっている場合
 →糖尿病性網膜症で眼底出血を起こしやすい場合
 →高度の自律神経障害がある場合
3.著しい高血圧(収縮期血圧180mmHg以上)。
4.虚血性心疾患(安定期は除く)・腎機能障害・進んだ肝障害(肝炎・肝硬変)がある場合。
5.体調の思わしくない日(風邪・頭痛・発熱・腹痛・下痢・寝不足・二日酔い)。
6.心不全がある場合。
 

薬物療法 〜高度の肥満には薬も〜

 
 BMI 35以上の高度肥満で、食事・運動療法だけでは治療が困難なかたについては食欲抑制薬(マジンドール、商品名サノレックス)を使うことがあります。
この薬は脳の食欲中枢に働いて、食事の際に満腹感を早くこさせ、空腹感がゆっくりくる、といった作用を持っています。あくまで食事・運動療法の補助に用いるものです。
そのほか、漢方薬(防風通聖散)などを使うこともありますが、減量効果はあまり強いものではありません。
 
 

外科療法 〜超肥満者には手術〜

 
 欧米人に見られるような超肥満者に行われるもので、日本人では手術を必要とするような肥満者は、ほとんどいません。最もよくみられる手術法は、胃にバンドを巻くなどして極端に容積を減少させた胃袋をつくるというものです。胃と腸を短くつないでバイパスし栄養の吸収を落とす、といった手術もあります。
 
歯科装具は、睡眠中に装着し、舌や下あごを前方に固定することで舌の広報の気道スペースを広げ気道の閉塞を防ぎます。
歯科装具は睡眠障害の専門医と連携を持つ経験豊富な歯科医師によって患者さん個々に作成してもらうことが必要です。
睡眠障害を扱える、上気道が視覚的によく観察できる耳鼻咽喉科医と睡眠障害を十分理解できる歯科医のもとで作られる必要があります。
 
 

それでも、やせる努力はおこたらずに

 
 たとえCPAPがうまくあなたの無呼吸を改善させたとしても、いまのままでは一生CPAPを使い続けねばなりません。無呼吸をおこすきっかけは、多くのかたでは「若いときより太った」という事実です。CPAPをはずしても無呼吸のない眠りを得られるようするには、決してやせることをあきらめてはいけません。多くの仕事とストレスが、あなたの時間と心の余裕を奪い、いまはどうしても減量できなくても、せめて現状維持を目標として時期を待ちましょう。
 
 
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